病名から調べる



神経膠腫(グリオーマ)とは?

 神経膠腫(グリオーマ)は脳組織の主要な構造物である神経膠細胞(グリア細胞)から発生する腫瘍です。
 主に星細胞腫(アストロサイトーマ)系と乏突起細胞腫(オリゴデンドログリオーマ)系に分けられますが、 その他にも様々な種類があります。 悪性度も様々で、主に小児に発生して非常に長期予後が期待できる「毛様細胞性星細胞腫」から、 悪性度の非常に高い「膠芽腫」まで多岐にわたります。 脳組織そのものから発生する腫瘍であるため、通常、正常脳との境界は極めて不明瞭で、 肉眼的には正常脳とまったく区別ができないこともあります。

神経膠腫(グリオーマ)の治療

 この腫瘍に対する手術の目的は、大まかには、【1】正確な診断をつける【2】できる限りの腫瘍細胞を摘出する、 という2つの点になります。 また、腫瘍そのものが重要な脳の部位(言語をつかさどる脳の部位や手足の運動をつかさどる脳の部位、 eloquent areaと呼ばれます) に存在する場合や、 隣接した部位に存在する場合には、手術によって何らかの神経症状 (言語の症状や運動麻痺など)をだす危険性がありますので、 これを回避する努力をしなければなりません。

 当院では、これらの目的を達成するために、「術中ナビゲーション」と「術中蛍光診断」を 併用しています。 術前に得られた画像情報(MRIや後述するPETなど)を術中ナビゲーションという機械上で統合します。 「術中ナビゲーション」はカーナビのようなもので、 病変部や重要構造物がどこにあるかを手術中にリアルタイムに 画面上で表示 してくれる装置です。 当院では脳腫瘍の手術では常にこの装置を使用することができます。 腫瘍は肉眼的にも正常脳組織と極めて類似しているため、 実際の手術ではナビゲーションの情報を常に 手術に反映しながら、 摘出する範囲を決定していきます。



 「術中蛍光診断」とは、アミノレブリン酸(5-ALA)という 物質を使用した術中診断方法です。手術の直前にこの薬剤を経口で摂取します。 この薬剤は悪性神経膠腫細胞に多く取り込まれる一方で、 正常細胞にはほとんど取り込まれません。手術中に415nmの波長のレーザー光を当てると、 5-ALAが取り込まれた細胞が赤色に発色します (正確には、5-ALAが発光するのではなく、取り込まれた5-ALAは腫瘍細胞内でプロトポルフィリン(Pp?)に 変換され蓄積し、 この物質が励起します)。上述したように、この腫瘍は正常脳との境界が極めて不明瞭ですので、この発色の有無で摘出範囲を決めたり、 残存腫瘍がないかどうかを確認することができます。

 右の写真は腫瘍を含めて摘出した組織に実際にレーザー光をあてて観察しているところです。 黄色の矢印が腫瘍の部分ですが、 この部分が明瞭に発光していることが分かります。 これら以外にも、 腫瘍の発生部位に合わせて、手術前に「functional MRI(機能MRI)」 などの特殊なMRI撮影を行って言語野 (言語を司っている脳の部位)を 同定したり、手術中に脳の運動野(運動を司っている脳の部分)を刺激する 「術中電気生理モニタリング」などを併用することで、 手術後の合併症を極力回避する努力を行います。

 また、北大神経外科・核医学科との協力のもと、術前にPET検査(核医学検査の一種です)を行う場合もあります。 この検査で手術前にある程度の悪性度や腫瘍組織型の診断の予想がつけられる他、腫瘍内で活動性の高い部分を 検出することができる可能性があります。 この情報も手術ナビゲーションに統合することができますので、 手術の際により詳細な情報を得ることができます。

 右図はPETとMRIを組み合わせたナビゲーションで腫瘍摘出範囲を決定した場面です。 当院で行っている神経膠腫の手術治療は以上の通りですが、この腫瘍に対する治療は手術のみではありません。 特に悪性度が高い腫瘍の場合は、たとえ画像上ですべての病変が摘出されていると判断されても、 手術後に速やかに後療法(放射線治療や化学療法)を行う必要があります。
当院は、化学療法(抗癌剤の治療)や放射線照射を行う際には、必要に応じて北海道大学神経外科、放射線科と連携して 行うこととしております。