専門分野



 神経内科は一般にあまりなじみのない科ですが、目、舌、顔、手足などの運動機能障害、 全身のあちらこちらの しびれや痛みが、神経系のどこの場所の障害からくるのか、また、その原因と なっている病気がなにかを調べ、 内科的に治療します。神経や筋肉に限局した病気もありますが、 内科的な病気が神経の障害をもたらすこともあります。 したがって神経内科の対象となる病気の種類は とても多く、その中には非常にまれにしかみられないめずらしい病気も たくさん含まれています。 その中でも、特にパーキンソン病と不随意運動(勝手にからだが動いてしまう)について力 を入れて診療しています。

 

パーキンソン病

 パーキンソン病はそれほどめずらしい病気ではなく、現在、当院に通院されているパーキンソン病の患者さんは180名以上いらっしゃいます。
パーキンソン病は脳内のドパミン産生細胞が変性し、ドパミン系の機能が低下してしまう病気です。

 ドパミン神経経路は、運動がすばやく大きく行える、気持ちが前向きで明るくなるなど、運動や感情のコントロールに重要な働きをしています。 脳内のドパミン量をふやすL-DOPA(メネシット、ネオドパゾール、ネオドパストンなど)はパーキンソン病治療の中心となる薬で、 ほとんどの症状に著効しますが、発症が若い(60歳以下)患者さんではL-DOPAを服用して5年以内に20%から50%で薬効が 不安定となり、 薬をのんでもなかなか効かなくなったり、1時間程で切れたりするようになります。 また、効いているときにくねくねとした不随意運動(ジスキネジア)が 生じたり、切れかけたときにおなかや足に痛みを 伴う突っ張り(ジストニア)が生じたりするようになります。 薬がきれると動けないし、不安になるのでどうしても薬が 欲しくなりますが、薬が多くのめばのむほど日内変動は悪化してしまいます。 当院ではL-DOPAを少なくするように心がけてきました。治療を開始して5年から9年目の患者さんに対するL-DOPA処方量は 一日平均190mg前後と、 治療5年目で400mg程度を使用している欧米に比べはるかに少ない量です。治療して10年未満では 日内変動の発現率もジスキネジアの発現率も10%未満です。

 近年パーキンソン病治療に対する新薬がどんどん開発されていますが、その主なものはアゴニストという、L-DOPAと同様にドパミン受容体を刺激する薬です。 これはL-DOPAに比べると日内変動が生じにくいという長所があります。 日本神経学会が作成したパーキンソン病治療のガイドラインでは、 発症が比較的若い患者さんにはアゴニストを積極的に使用 するよう、書かれています。しかし、ドパミン神経経路は運動だけではなく、情動や意欲にも大切な役割を果たします。 あまり過剰な刺激が加わると、幻覚、妄想、性的欲望、薬物依存などの困った症状がでてしまいます。 より良い状態を維持するためには、病気と薬の特徴を良く理解し、筋力・体力だけではなく、精神力を高める努力を行うこ とがとても大切です。

不随意運動

不随意運動には非常に多くの種類があります。

振戦 リズミカルなふるえ
ジスキネジア 比較的速いねじれるような動き。口をもぐもぐさせているのは口ジスキネジアといい、老人に多くみられます
舞踏運動 首や手足に見られるすばやいくねくねした動き
ジストニア 持続性の強いねじれるような動き。傾性斜頚、書痙などが含まれます。 子供の頃に発病した場合はからだ自体がねじれてしまうことがあります。
ミオクローヌス びくん、という発作的な動き。寝入りばなにでることがあります。
筋維束攣縮 筋肉の一部がぴくぴくと勝手にけいれんする。筋肉労働で疲れたあとなどにでることがあります。
チック 肩や頚をすくめるような非常にすばやい動き

などです。 ここで最近新しい知見が得られてきているジストニアについて御説明しましょう。

 ジストニアは、ねじれたような姿勢と動きが特徴ですが、時に振戦やミオクローヌスを伴うこともあります。精神的な緊張を伴う同じような動作(楽器の演奏、書字など) をくりかえすことで生じることがめずらしくありません。抗精神薬(うつ病や統合失調症の治療薬)の副作用として、頚部を後ろにそるような不随意運動が生じることが あり、これを遅発性ジスキネジアと呼びますが、これもジストニアの仲間です。また、若い女性で外傷(けがや手術)を受けた手もしくは足が激しい痛みとともに 特異な姿勢を取るようになります(手の場合は内側に曲がり、足はつっぱったような形をとることが多い)。こうしたジストニアはこじれると非常に難治性であり、 早期に診断し治療を開始しなければなりません。重症の遅発性ジストニアに対し、脳深部刺激術が著効することもわかってきました。

 不随意運動はその特徴を目で観察して診断するしかありません。ジストニアのように、いくつかの不随意運動が混合した状態となるものについては、 それを実際に見た経験のある専門医でなければ診断が困難な場合があります。欧米ではパーキンソン病や不随意運動などに対し専門のクリニック (Movement Disorder Clinic)があり、診断が難しい不随意運動の患者さんはそこを受診し、診断と治療を受けます。

 当院は国内外の学会や研究会に参加し、種々の不随意運動について勉強を行い、報告も行って参りました。 そこで得た知識を地域医療に役立てるため、平成19年4月より不随意運動専門外来を開くことにいたしました。不随意運動専門外来は完全予約制で、 毎週水曜日午前中に行います。詳細は当院連携室にお問い合わせ下さい。