専門外来
脳血管

脳腫瘍

脳腫瘍

 "脳腫瘍"などと聞くと、"とても恐ろしい不治の病"というイメージはありませんか? しかし、"脳腫瘍"のすべてが脳から発生する腫瘍を意味するものではありません。 ちょっと変ですね。本来は、"脳腫瘍"は、脳から発生する腫瘍を意味する言葉なのですが、 実際には、頭蓋骨の中にできる腫瘍の全てを"脳腫瘍"と呼んでいるのです。極端な場合は、 頭にできる腫瘍全てを含むことさえあります。従って、ひとくちに"脳腫瘍"といっても、神経膠芽腫、悪性リンパ腫、転移性脳腫瘍などの悪性腫瘍から、髄膜腫、神経鞘腫、下垂体腺腫などの良性腫瘍まで、対象となる疾患は幅が広く、その性質は全く異なります。中には、幼少児期よりあったと考えられる、くも膜嚢胞やラトケ嚢胞、松果体嚢胞など、本当は"腫瘍" ではないものまで、"脳腫瘍"と言われてしまうことさえあるのです。"脳腫瘍"イコール不治の病ではありません。

 近年、MRIという脳の微細な構造までを 明らかにする画像の発達に伴い(しかも、いわゆる「脳ドック」などの普及に伴い)、脳腫瘍の中でも、極めて初期の、あるいは無症状の腫瘍が偶然にも発見される頻度が高まっています。もちろん進行の速い 疾患に対しては、迅速な対応が必要となることは言うまでもありません。

 当院では、これら多岐にわたる脳腫瘍を幅広く診療しています。診断は主に1.5テスラ高解像度MRIを用い、脳神経外科専門医および神経放射線専門医がこれを行います。本当に必要な最善の治療を慎重に考え、患者サイドに立って生活の質を向上させるための治療を目指しています。そのため、脳腫瘍の治療は、脳という特殊な領域の専門的知識ばかりでなく、「腫瘍・癌」という良性・悪性の新生物に対する 腫瘍医学oncologyの立場からの目が必要となります。

 このように慎重かつ入念な診断のもとに、手術が必要となった脳腫瘍の患者さんは、当院でも年間に50~70件に及びます。開頭による腫瘍摘出術には、MRI誘導によるナビゲーション・システムをいち早く導入しており、必要があればこれを利用して巨大な脳腫瘍の手術も行われます。しかし、脳腫瘍は必ずしも手術だけで治せるものではありません。極端な話になりますが、たとえば胃癌なら胃を全部取ってしまって治すこともできます。しかし、脳を全部取ってしまうことはできないですよね。その場合は、化学療法や放射線療法を併用することになります。

 また当院では、病理学的診断を目的としたCT/MR誘導定位脳手術による生検術を多く行っており、大学病院や他の病院からの依頼もしばしばあります。化学療法や放射線治療などの治療は、必要に応じ北海道大学脳神経外科脳腫瘍グループおよび 同放射線科神経放射線治療グループとの連係のもとに行われます。

 病気は、基本的に患者さん一人一人違うもの。同じ診断名でも同じ治療になるとは限りません。当院では、それぞれの診断名ではなく、患者さん一人一人に最も合った治療法を検討し、実践することをモットーとしています。

 最後になりましたが、少しでも多くの患者さんを救いたいとの信念から、日々研究も疎かにしていません。悪性脳腫瘍に対する治療成績、ナビゲーション・システムを用いた脳腫瘍摘出方法などについてまとめ、国内、国外の学会で発表しています。