こんな症状

手足、全身の痙攣

けいれん(痙攣)は、全身または一部の骨格筋の不随意な収縮の総称として呼ばれています。けいれん発作は、いろいろな原因から起こる可能性があります。大きく分けると1.脳性、2.脳外性による分類があります。

脳性(原因が脳そのものにある場合)

【考えられる病気】
脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血など)、脳腫瘍 頭部外傷(脳挫傷を含める)、感染症(脳炎、髄膜炎、脳膿瘍など)特発性(真性)てんかん、症候性てんかん(脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷、感染症、脱髄疾患、先天奇形など)

脳外性(原因が脳以外で、その原因によって脳に機能障害をもたらすもの)

【考えられる病気】
熱性痙攣、代謝性(低血糖、水・電解質異常)、中毒性(尿毒症、肝不全、鉛・水銀中毒など)、低酸素脳症など

けいれんは、【1】脳性による、脳(実質)を中心とした障害が原因 として起こる場合と、【2】脳以外の発熱や電解質異常や中毒症状などが原因 でも起こる場合があります。
けいれん発作を止める、または予防してゆく目的として、抗けいれん(てんかん)剤と呼ばれる薬剤を使用することがありますが、【2】の場合は、その病態に応じた原因疾患に対しても治療を行ってゆきます。

抗けいれん(てんかん)剤の種類は、その発作型(部分発作や全般発作など)を分類(てんかん発作の国際分類など)することによって使い分けられます。てんかん(癲癇)と言う言葉は、慢性の脳疾患であり、大脳ニューロンの過剰な発射の出現部位、広がりによって、痙攣・意識障害など種々の症状を呈するもの。と定義されています。つまり、繰り返すけいれん発作に対して、その治療の対象となる状態なのか判断する必要があります。てんかんの分類・治療については、ガイトラインにより診断・治療(内服および外科的治療)方法まで紹介されています。

大切なことは、患者さんに対して適切な診断および治療を行ってゆくことによって、生活の質を保ちながら、この病気に対する理解をご本人だけではなく、ご家族や周囲の人たちにも得てゆくことになります。


熱性けいれん(痙攣)について

乳幼児期(生後6ヶ月から5歳まで)には発熱時にけいれん発作(ひきつけ)を起こすことがしばしばあります。子どもの100人中7~8人は経験すると言われています。熱性けいれんは多くは熱(38度以上)が急にあがり始めた時に起こります。熱性けいれんを経験した子の2/3は生涯を通して1回きりです。残りの1/3は2回以上経験します。3回以上経験するのは熱性けいれんを経験した子の9%位とされています。熱性けいれんは熱で引きつけを起こしやすい体質によるもので、親や家族に熱性けいれんの経験のある場合に比較的よく見られ、遺伝的素因に関与が考えられています。

熱性けいれんが起こったときは、あわてないこと。静かに寝かし、その状態でけいれんの様子を観察して下さい。(後で医師にけいれんの様子を詳しく伝えられるように)吐きそうなしぐさをした時には吐物が喉につまらないように顔を横向けにします。舌をかまないようにと口にものを入れたりしますが絶対にやらないで下さい。入れたもので口の中を切ったり、誤飲(誤嚥)してしまうこともあります。発作は大体は5分以内で治まります。10分以上続くようならけいれんの途中でも救急車を呼びかかりつけ医(小児科、脳神経外科など)を受診して下さい。

熱に伴ってみられるけいれんには、まれに脳炎とか髄膜炎もありますので、けいれんが止まったら初めての時は単なる熱性けいれんかどうか確かめる必要があるのでかかりつけ医や時間外なら救急診療所などを受診しましょう。熱性けいれんを何回か経験している場合は、以前の症状と特に変わりがなければ落ち着いてからかかりつけ医を受診し、夜間なら翌日受診しても問題ないと思います。熱性けいれんは特に予防しなければならないものではありませんが、発熱の度に熱性けいれんを起こすようなら薬によって予防することができます。

熱性けいれんは体温が急激に上昇する時に起こりやすいので、37.5度前後の発熱に気づいた時、できるだけ速やかに処方されている坐薬を肛門内に深めに挿入します。そして38度以上の発熱が続く場合には8時間後にもう一度だけ坐薬を挿入します。これで発熱から24時間は熱性けいれんを予防することが可能です。熱性けいれんの90%以上は発熱が始まってから24時間以内におこります。従って2回目以後は原則としてそれ以上坐薬を使用する必要はありません。ひきつけ止めの坐薬と解熱剤の坐薬をと併用するときは、同時に使うと引きつけを抑える効果が下がりますので下、少なくとも30分以上間をあけて使用して下さい。