看護部

麻生の看護

退院支援・退院調整

 昨今、退院調整加算の引き上げや平均在院日数の短縮により、退院支援の必要性が高まっています。しかし、病院における退院支援の目的は経営的な視点ではなかったはずです。本来の退院支援は、疾患や障害を抱えながらも生活していた場に帰すこと、もしくは患者さま、御家族が望む生活の場を整える事にあったはずです。

 当院は脳神経外科の専門病院であり、脳卒中を筆頭に脳腫瘍、脊髄・脊椎疾患などの患者さまが来院、入院されます。程度の違いはありますが、麻痺や意識障害によって入院前に比べてADLが低下し、生活様式の再構築が必要な患者さまがおり、退院支援が必要になります。また、脳卒中を発症したけれど無症候性の(障害がない)患者さまもいます。その場合は自宅に帰れますが、退院支援が必要な場合もあります。なぜかというと、脳卒中は生活習慣病が発症の一因となることがあり、入院前の生活に何らかの問題を抱えていたことが示唆され、退院後にもとの生活に戻ると再発の可能性が潜んでいる場合があります。その場合も退院支援が必要なことがあります。

 さらに、独居や必要な介護を十分に受けられない場合や社会資源を利用しないと在宅の移行が困難な場合など退院支援が必要な場合が多くあります。

 そこで当院では、病棟看護師と外来看護師、メディカルソーシャルワーカー、さらに医師、リハビリスタッフと連携をし、患者さま、御家族と合意形成を繰り返しながら「生活の場に帰る医療と看護」を提供しています。また、積極的に地域で在宅を支援している在宅医、ケアマネと連絡を取り、患者さまが生活の場に帰る事ができる為のネットワークを作っています。

 看護師が退院支援をスムーズにおこなうための教育プログラムも組んでいます。演習で模擬合同カンファレンスを行い、地域のスタッフが病院側にどのような情報、介入を求めているのか、病棟看護師は入院中にどのような準備をして、どのような介入をおこなえば良いのかを学びます。また、模擬カンファレンスで患者さま役、御家族役になることもあり、どのような気持ちでカンファレンスに参加しているのかを感じる事もできます。


研修風景

 当院では、退院調整看護師を配置していません。もしかしたら、退院調整看護師を配置すると、今まで以上にスムーズな退院支援ができるかもしれません。しかし、「患者さまを生活の場に帰す」退院支援は、看護師の「患者さま、御家族に寄り添う看護」を実現できる場でもあります。「退院支援は難しいけど、楽しい」と看護師が言えるよう、そして、患者さま、御家族が望む退院後の生活が実現できるよう退院支援のシステムを構築しています。