こんな症状

腰痛

「腰」という字には「要(かなめ)」が含まれているように、人間が体を支えるうえで非常に重要な場所です。2本足歩行をする人間では体重の60%を腰の骨で支えているといわれ、その負担が腰痛をもたらします。従って、腰痛はありふれた症状のひとつで、60-90%の人が一度は経験するといわれています。

腰の構造

さて腰はどのような構造になっているのでしょうか。腰の支柱になる背骨は脊椎という骨、椎間板、靱帯などからなっています。脊椎はブロック状の骨で 積み木のように縦に並んでいます。それぞれの脊椎の間には椎間板というクッションの役割をする軟骨が存在します。脊椎は手足と同じように靱帯でつなぎとめられており、更にはそれぞれの脊椎が関節を形成して腰の動きを円滑にしています。このような脊椎、椎間板、靱帯、関節は長年の負担で少しずつ変形してくるもので、この変形が腰痛の原因となります。

また、腰にはたくさんの筋肉があり、この筋肉が原因で腰痛を来たすことも多々あります。脊椎の中には神経が走っています。腰の病気になると神経の障害から足の痛みやしびれ、動きが悪くなるなどの 症状を出すこともあります。稀には尿が出にくい、便が漏れるなどの症状が出ることもあります。腰痛にはいろいろな原因があり、検査によりおおよそわかります。腰痛の多くは治療をしなくても 1ヶ月以内に軽減すると言われていますが、時には注意を要する腰痛もあります。

こんな腰痛は早めに検査を!

日増しに痛みが強くなる腰痛
腰痛とともに熱がでる腰痛
夜間寝ている時に痛みが強くなる腰痛
足の麻痺や排尿困難を伴う腰痛

【検査方法】
レントゲン、CTスキャン、MRIなどが一般的に行われます。レントゲン、CTスキャンでは骨の状態がよくわかります。MRIでは腰の神経の状態が細かく見えます。椎間板や靱帯などもよくわかります。通常、レントゲンとMRIで腰の状態がわかりますが、必要に応じてCTスキャンや造影剤を使用したMRIを撮像します。

【考えられる病気】

筋・筋膜性腰痛
筋肉や筋膜(筋肉を包む膜)の疲労によって生じます。長時間同じ姿勢でいたり、過度の労働、スポーツ、打撲などが原因となります。腰が疲れてくると痛みが強くなります(夕方など)。検査をしても異常はあまり見られません。

椎間板ヘルニア
クッションの役割をする椎間板がつぶれて飛び出した状態のことです。若年者でもよく見られ、重いものを持ったり、腰に急激な負担がかかったときに生じます。神経が圧迫されて、お尻から足に痛みを生じることも多く、前かがみになったり、仰向けに寝て足を上げると足の痛みが強くなります。

腰椎分離すべり症、変性すべり症
腰の骨の一部に亀裂が入っていたり、関節がゆるんで骨がずれてしまった状態のことを言います。分離すべり症は若い人に多く、変性すべり症は高齢者に多く見られます。 激しいスポーツなどをしていた方に多く、腰を動かすと痛みが強くなる傾向があります。

圧迫骨折
すかすかになった腰の骨(骨粗しょう症)がつぶれた状態です。高齢者(特に女性)に多くみられ、しりもちをついたり、重いものを持ったときに骨がつぶれてしまいます。立ったり座ったりすると痛みが強くなります。

腰部脊柱管狭窄症
腰の神経の通り道が様々な要因で狭くなった状態で、高齢者に多く見られます。通常、腰痛というよりは下肢の痛み、しびれが中心です。歩いているとだんだん足が痛くなるのが特徴的な症状です。前かがみになると症状は軽減することが多く、自転車はいくらでも乗れるが、歩くのは困難というのが典型的です。

関節性腰痛
脊椎をつなぎとめる関節(椎間関節)や背骨と骨盤の間の関節(仙腸関節)にストレスが加わることによる腰痛です。朝起きたときには痛みが強いが、動いているうちに徐々に軽減する傾向があります。

脊椎、脊髄腫瘍
稀な病気ですが、背骨やその中を走る神経に腫瘍ができることがあります。足のしびれ、力が入らないなどの 症状が徐々に出てきますが、初期症状として腰痛を伴うことがあります。MRIにより診断されます。腫瘍の種類によっては早めの治療が必要となるため、腰痛が徐々に増強したり、夜間寝ている時に強くなる場合は 早めに検査を受けましょう。

内臓の病気による腰痛
腰痛は種々の内臓の病気でも見られます。一般的には消化器疾患(胃・十二指腸、すい臓、肝臓、胆嚢など)、腎臓、尿管結石、大動脈瘤・解離、婦人科疾患などがあります。原因がわからない腰痛や、随伴する症状によっては 専門の病院を受診したほうが良いでしょう。

腰痛予防、治療

腰痛の予防は、姿勢の改善、腰痛体操などを積極的に取り入れることです。また、肥満、腰への負担(重いものを持つ、長時間同じ姿勢)、喫煙などを取り除くことも重要なことです。その他、腰の骨への負担を減らすため、腰の筋肉をつけることも必要です。筋肉にかかる体重の負担は腹筋30%、背筋70%といわれ、これをバランスよく鍛えることが重要です。治療は、投薬治療、コルセット、リハビリ治療、高圧酸素療法、手術治療などです。これは症状や原因に応じて決まります。通常、腰痛だけで手術治療を行うことは稀で、痛みが強いときは安静や投薬治療などにより症状の軽減が期待できます(症状が強いときに腹筋、背筋を鍛えるのは逆効果です)。温熱治療、電気治療、鍼灸治療、整体治療など様々な治療を 組み合わせることも効果があります。